民事保全の担保提供に保険会社の保証書が使用できるようになりました

 

全国弁護士協同組合連合会と損害保険ジャパン日本興亜が協定を結び,民事保全の担保提供に保険会社の保証書を利用できる「支払保証委託契約(ボンド)制度が2019年7月から開始されたとのことです。

これまでの民事保全における担保金と同制度の活用についてご説明します。

 

民事保全における担保金について

 

民事訴訟は一般的に相当の時間を要するため,その間に相手の財産状態が変化したり財産を隠されたりなどして,せっかく訴訟に勝訴をしても強制執行をすることができなくなってしまうという危険があります。

そこで,民事保全の手続きを利用して,暫定的に相手方の財産を差し押さえたり,売却や占有の移転を禁止することで,訴訟が無意味なものにならないようにすることができます。

 

具体例

①200万円を貸しているが返してくれないようなケース

〇〇銀行に口座を持っていることは判明しているが,このままではその口座の預金も無くなってしまう危険があるという場合には,当該口座の預金債権を「仮差押え」をしておけば,当該口座から預金を払い戻せなくすることができます。

 

②土地の売買契約を締結したのに,売主が決済に応じてくれないようなケース

土地を買ったものの,登記手続きをする前に,売主が他の買主にも売却して登記手続きをされてしまうと,その土地の所有権を取得することはできなくなるおそれがあります。このような場合には,売主が他に売却してしまわないよう,「処分禁止の仮処分」をすることが効果的です。

 

③賃貸借契約を解除したが,明け渡してくれないようなケース

借主に対して明渡請求訴訟を提起しても,居住者が別の者に代わってしまうと,借主に対する訴訟に勝訴してもその別の者に対しては強制執行ができなくなるおそれがあります。このような場合には,当該物件の占有を変更できないよう,「占有移転禁止の仮処分」をすることが効果的です。

 

しかし,これらの民事保全の手続きは,あくまで訴訟を前提とした暫定的なものにすぎず,簡易な手続きでその判断がなされるため,相手方(債務者といいます)にとっては致命的な損害となる可能性があることから,民事保全の申立てをする際には,担保を立てることが原則として必要となります(民事保全法14条)。

この担保の額については,裁判所が,当該事件の具体的事情等を考慮して妥当な金額を決定するのですが,その額は,目的物の価格の10%~30%ほどになることが多く(注:場合によっては,5%だったり,70%だったりする場合もあります。),非常に高額になりがちであるため,民事保全を断念または躊躇せざるをえない方も多いと思います。

(例えば,1000万円の価値のある不動産を仮差押えしようとした場合,100万円~300万円ほどの担保の準備が必要になります。)

 

担保の方法について

担保を立てる方法としては,①金銭や有価証券を供託する方法の他に,②裁判所の許可を得て,銀行や保険会社などの金融機関による保証書を担保とすることもできます(民事保全法4条1項,同規則2条1項)。

上記②の方法は,保全の申立をする人(債権者といいます)が,金融機関との間で支払保証委託契約を締結して保証書を発行してもらい,それを担保として提供する方法です。

一般的に,銀行などで支払保証委託契約をしようとする場合には保証希望額までの定期預金が必要になることが多く,結局,高額な資金が必要となり,上記①の方法に比べても,あまりメリットはありませんでした。

 

民事保全「支払保証委託契約(ボンド)」制度について

本制度は,全国弁護士協同組合連合会の所属弁護士が担当する民事保全上の手続きのうち,仮差押え,係争物に関する仮処分(仮地位仮処分は除く)については,一定の保証料を準備することにより,保険会社が保証書を発行しそれを担保提供とすることができる制度です。

この制度を利用することで,高額な供託金(現金)等を準備しなくとも,民事保全手続を利用することができます。

 

保証料の例

保証額が200万円の場合→保証料は12万円

保証額が1000万円の場合→保証料は46万円

保証額が4000万円の場合→保証料は146万円

 

これから訴訟を検討しており,民事保全の手続きを利用する必要があるかもしれないと考えているものの,高額な担保金を準備できないために保全を断念したり躊躇している方にとっては,本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

当事務所では,そもそもの訴訟における勝訴の見込みも含めて,保全手続きの利用が必要か否か,必要だとしたらいかなる方法で保全手続きを利用するのか,ご依頼者様の利益を最優先に適切な判断ができるようお手伝いさせていただきます。

 

※案件ごとに保険会社が信用調査を行い,引受可能な補償額の限度を設定しますので,必ず使用できるわけではないことにはご注意ください。

※上記のとおり保証料がかかりますので,ご注意ください。

※詳細は,保険会社の約款等によります。

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